税務調査運用に関して法令化され、10月から一部試験運用されていますが、平成25年1月より本格的に適用が開始されます。
さて、税務調査運用に関して法令化されたことにより、納税者にとって注意すべき点はどこにあるのでしょうか。第3回目は「調査終了手続きについて」です。
第3回目:「調査終了手続きについて」
1.結果の説明は、原則納税義務者へ
実地調査が終わりますと、調査結果の説明があります。現状、税務 代理人がいらっしゃる納税義務者の方は、税務代理人を通じてあるいは税務代理人と一緒に調査結果の説明を受けているのではないでしょうか。この調査結果の 説明に関しても従来は法令上の規定はなかったわけですが、これが法令化されました。具体的には、次の規定です(一部簡略化しています)。
国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、納税義務者に対し、その調査結果の内容を説明する。
これは、原則書面ではなく、口頭で説明がなされます。
また、規定上は“納税義務者に対し”ですから、税務代理人がいても規定上は税務代理人に説明は行われませんが、納税義務者の同意がある場合には、納税義務者に代えて、税務代理人に対して説明を行います。
つまり、税務代理人がいる場合には、調査結果の説明がなされる時点で「税務代理人に説明して下さい。」と申し出ていれば、自ら直接聞く必要はないということです。この申し出については、調査官に対して直接言うか税務代理人を通じて書類を提出するかのいずれかになります。
2.教示文の交付、署名押印が義務化
また、調査結果を説明する際に、今までなかった「不服申立てをす ることはできないが更正の請求をすることはできる旨」を記載した書面が公布され、この書面に署名押印をしなければならなくなりました。不服申立てをするこ とはできないことのみが記載された教示文が交付されていた経験のある方もいらっしゃるかもしれません。これは法令上規定がなかったわけですが、今回の改正 により法令化され、義務化されました。また、更正の請求をすることはできる旨の記載が従来の教示文に追加されています。さらに、書面に署名押印が必要とな ります。これに関しても原則として納税義務者の方が署名押印するわけですが、こちらも納税義務者の同意があれば、納税義務者に代わり税務代理人が署名押印 することができます。
3.いわゆる是認通知の法令化
実地調査が行われ、指導事項や非違がなかった場合に、いわゆる是認通知 を受け取った方もいらっしゃるでしょう。このような是認通知は法令上の規定がなく、実務上の慣行として行われてきました。これについて、今回法令上に規定 がされています。具体的には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が書面で通知されることになりました。法令化される以前との違いは、指導事 項があったとしても非違がない場合には通知されること、課税期間ごとに非違を判断し通知することでしょう。
例.12月末決算法人に対し、次の税目及び課税期間について実地調査を行った
①平成21年度 法人税 なし ②平成21.1.1~12.31 消費税 なし
③平成22年度 法人税 なし ④平成22.1.1~12.31 消費税 なし
⑤平成23年度 法人税 あり ⑥平成23.1.1~12.31 消費税 あり
上記の場合において、現状では、調査した税目・課税期間の全てにおいて指導事項や非違がなかった場合に是認通知が出されるため、通知はありませ ん。一方、法令化された新しい規定では、非違があるかどうかは税目・課税期間ごとに判断していくため、①②③④について1枚にまとめて書面で通知されま す。
なお、通知先は原則納税義務者になりますが、納税義務者の同意があれば、納税義務者に代わり税務代理人に対して通知をしてもらうことができます。