福岡・佐賀の税理士法人アーク・パートナーズのブログです。
近いうちに相続税が増税されると新聞記事や雑誌をよく見かけます。
相続税が増税されるとプチ富裕層も相続税の対象になる可能性がでてくるため、相続税対策を色々と考えておられる方も多くいらっしゃるとおもいます。
相続税対策の一つとして有名なものに推定被相続人が借金をするという方法があります。
この借金が本当に相続税の節税効果があるのか、当ブログで二通り検証してみます。
前提条件として、借入前の被相続人の正味の純財産が1億円と仮定します。
一つ目のケースが1億円の借入を行い同額の投資用の賃貸不動産を購入するケースです。
この場合、1億円のプラス財産(投資物件)と1億円のマイナス財産(借金)があるため、一般的には差し引きゼロと考えがちですが、これが相続税評価となると異なってきます。
具体的には、投資用賃貸不動産は1億円のプラス財産ではなく、投資額の40%-70%ほどで評価されるようになります。
一方で借入金は評価時期の借入残高で評価するのでマイナス財産は1億円です。
したがって、借入で投資用賃貸不動産を購入すると、借入直後は純財産が減少することになります(このケースだと、借入で投資用賃貸不動産を購入することにより、純財産が3,000万円~6,000万円減少しますので、借入直後の純財産は4,000万円~7,000万円になります)。
このケースだと確かに相続税の節税効果はあります(ただし、借入時から相続発生時までの期間が長ければ長いほど、この節税効果が下がる可能性があります)。
では、ただ借入を行うだけのケースだとどうでしょうか。
この場合は借入直前と直後で純財産の変動はありません。
具体的には、
5,000万円(借入直前純財産)+1億円(借入により調達した預金など)-1億円(借入金)=5,000万円
となります。
したがって、相続税の節税効果は見込めません。
以上2パターンみてきた通り、ただ借入を行うだけだと相続税の節税効果はありませんので、相続税対策で借入を行う場合は、借入により、純財産の減少が見込めるか検討してから実行しなければなりません。